「研修をやっても、結局現場は変わらない」
経営者や人事担当の方から、こうしたご相談をいただくことがあります。
私は45年にわたり接客業の現場に携わり、5,700回を超える研修を実施してきましたが、実はこの悩みには共通した原因があります。
それは、研修が「形だけ」で終わっているということです。
「形だけ研修」が変わらない理由
敬語の使い方、お辞儀の角度、笑顔のつくり方。接客の基本として大切なことですが、「こうしなさい」と形を教え込むだけの研修では、スタッフは時間とともに元に戻ります。
なぜか。本人が「なぜそうするのか」を理解していないからです。
あるコンビニで、外国人スタッフが「フクロイリマスカ?」「アリガトウゴザイマース」のたった2言で接客を済ませていました。それ以上教わっていないのですから、当然です。一方で、「お客さまを気持ちよく送り出してください」とだけ伝えられたスタッフは、自分なりの言葉で活き活きと接客していました。

形を覚えさせるだけでは、慣れとともに手を抜きます。
しかし「なぜそうするのか」を自分で考えたスタッフは、自ら工夫し始めるのです。
「気づきを生む研修」はここが違う
私どもが約200社の企業様とお付き合いする中でたどり着いたのが、「気づき」を起点にした研修サイクルです。 企業研修>>
① ヒアリング ― まず現場の声を聴く
研修の前に、管理職やスタッフから「今、何に困っているか」を丁寧に聴き取ります。
「大きな声で怒鳴るお客さまにどう対応すればいいか」「ミスを繰り返す部下にどう声をかければいいか」。
こうしたリアルな悩みが、研修の出発点です。
② 課題設計 ― 現場の事例でプログラムをつくる
ヒアリングで集まった実際のお困りごとをもとに、その企業だけの研修プログラムを組み立てます。
教科書的な内容ではなく「うちの現場で本当に起きていること」を扱うからこそ、受講者の目の色が変わります。
③ 研修 ― 「あなたはどう思いますか?」
研修の場では、随所に「あなたはどう思いますか?」という問いかけを入れます。
答えを教えるのではなく、自分で考えてもらう。
ある企業でモチベーション研修を実施した際、「自分がマイナス思考だとわかった」と落ち込んだ受講者がいました。しかしそれこそが気づきです。
「これからモチベーションが上がるきっかけをつかめたのですね」とお伝えすると、表情がぱっと明るくなりました。伝えられた知識ではなく、自分で発見した気づきだからこそ、行動が変わるのです。
④ OJT ― 現場で実践する
研修で得た気づきを、翌日から現場で実践します。
ここで大切なのは、できる人を先頭に走らせる「トップアップ」の考え方です。
課題のある人の底上げに追われるのではなく、優秀なスタッフにチームを引っ張ってもらう。
すると周囲が自然とついていき、全体のレベルが上がっていきます。
⑤ フォローアップ ― 振り返り、認め合う
一定期間後にフォローアップ研修を実施し、現場で実践したことを持ち寄ります。
うまくいったことを共有し、成果を互いに認め合う。
この「振り返りと承認」のプロセスが、次の実践への意欲につながります。
モニタリング調査で接客レベルを数値化し、成果を見える化することも効果的です。
なぜ93.2%がリピートするのか
この5つのサイクルを回し続けることで、研修は「単発のイベント」ではなく「現場を変える仕組み」になります。
私どもの研修のリピート率は93.2%です。この数字は、一度きりの研修では得られません。ヒアリングから始まり、現場の実践を経て、フォローアップで成果を確認する。このサイクルを企業様と一緒に回し続けてきた結果です。
機械化やセルフサービスが進む時代だからこそ、人にしかできない気配りの価値は高まっています。「形」を教えるだけでなく、スタッフ一人ひとりが「なぜそうするのか」を自分の言葉で語れるようになること。それが、お客さまの心を動かす接客の原点です。

「研修をやっても変わらない」を、「研修で現場が変わった」に。私どもと一緒に、その仕組みをつくりませんか。
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著者
株式会社おもてなし経営研究所 代表 伊東 久
飲食・ホテルサービス業の現場に40年以上携わり、店長職から本部マネジメントまでを歴任。
長年の現場経験に基づく「一人ひとりが自走し、成長する仕組みづくり」を強みとする。現在はそのノウハウを活かし、飲食・宿泊業をはじめ、商業施設や官公庁、金融業など幅広い業種で人財育成のアドバイザーとして活動中。

